8abyrousa
2025.12.17
バビルサ(Babyrousa)は、インドネシアの島々に生息する珍獣。牙が上向きに湾曲しながら伸びており、頭蓋骨を突き刺しかねないことから、“死を見つめる動物”と呼ばれている。Redhair Rosyのニューシングル「8abyrousa」は、そんなバビルサをモチーフにした楽曲。今回のインタビューでは、Ryosei Yamada(Vo)とTaito Katahira(G)に同曲を解説してもらった。
取材・文 / 安部孝晴
──Redhair Rosyが始動してから、2025年10月9日で丸1年が経ちました。
Ryosei ちょっと早過ぎましたね。
Taito 早過ぎたなあ。
Ryosei ライブのセットリストをずっと更新し続けて、レコーディングとミックスに常に追われて。ほんまに半端じゃないスピード感やったなと思います。
──「8abyrousa」も、そんな激動の日々の中で作られたんですね。
Ryosei この曲はたぶん、ラブソングなんです。ラブソングにしようと思って歌詞を書いたわけじゃないけど、ライブのMCで曲紹介をするとき「これはラブソングや」って自然と言ってました。
──意図せず口から出たんですか。
Ryosei はい。恋愛の意味だけじゃなくて、家族とか、友人とか、よく会う近所の猫とか。「8abyrousa」は、そういうところまで含めたラブソングですね。
Taito ラブ&ピースソングよな。
Ryosei そうやな(笑)。
──「8abyrousa」の制作過程について、詳しく聞かせてください。
Ryosei この曲でまず意識したのは、ピークをしっかり作ること。今までなら1回だけで終わらせてたかもしれんサビを、2回繰り返すようにしてます。大きなうねりが生まれるように、スタジアムみたいな広い場所をイメージして、ドラムのフレーズや鍵盤のアンサンブル、声のディレイを組み上げていきました。ギターに関しては重たい音ときらびやかな音、両方欲しかったので、開放弦がたくさん鳴るようなコード進行にしてます。
Taito ギターをがっつり出すアレンジは、今まであんまりやってなかったから新鮮でした。
Ryosei 「Heart-Shaped Devil II」の場合は、KeishoのギターとTaitoのギターが絡み合って1つのフレーズになるんですけど、「8abyrousa」の場合は、KeishoとTaitoが基本的に同じフレーズを弾いてます。スリーピースバンドでも成り立つようなギターを意識しました。
──Taitoさんはギターだけでなく、鍵盤も弾いている?
Taito はい。最近はピアノを弾きたい気持ちが強くて。今後はもっとやっていこうと思ってます。イントロのフレーズはデモの段階からすでにあって、最初に聴いたときはLCD Soundsystem「All My Friends」みたいやなと思ったけど、実際に弾いてみると、やっぱり俺のリズム感になる。弾く人の手癖が出る。それが結果的にはよかったですね。
──レコーディングについてはいかがでしたか?
Taito 今回に関しては、イメージ通りの音像になったなと思います。そういう意味で、自分の進化を感じましたね。みんなでああだこうだ言いながら、全部の楽器をうまく出すことにフォーカスして。今年は常にレコーディングをしてたので、そういう時間が多くてすごくよかったです。
Ryosei 数年後、自分らで聴いたときに「やっぱいいもん作ったな」「あのときにしか作れへんかったな」と思えるようにがんばってます。レコーディングは己との戦いみたいな感じですね。
──「8abyrousa」がリリースされるのは12月24日。「もうクリスマスは来ないでしょ」という歌詞にぴったりな日付ですね。
Ryosei このフレーズは「サンタさんはもう来ない」という意味で、直前のリリック「2つに引き裂いた 駄菓子の味がした気がした」と同じニュアンスなんです。昔のことを思い出すキーワードとして「クリスマス」と「駄菓子」を入れてます。
──「2つに引き裂いた」というのは?
Ryosei 駄菓子って、分け合って食べてた記憶があって。例えば「蒲焼さん太郎」とか、ちぎって友達や弟にあげてた気がするんですよね。
──そして「蛇の影」と「月は下弦」。この押韻もすごく印象的でした。
Ryosei 「蛇の影」は「杯中の蛇影」に由来していて、“存在しないものを恐れる”という意味。「月は下弦」は歌詞を書いてるときに見上げた月が下弦だったというだけなんですが、実はこの2つ、虚構と現実の対比になっていて。ないものの影と、あるものの光で、韻を踏んでいるんです。
──片や「ただ会えるだけでいいのにね」はシンプルで、それ故に力強い表現ですね。
Ryosei なんかもうほんまに、会えるだけでいいという気持ち。それを直接的に書きました。前半の歌詞ではいろいろ問題提起をしてるけど、「お前ら間違ってるぞ」ではなく「俺もそうなんや」と伝えたいんです。クリスマスプレゼントはもう届かなくて、欲しいものリストが溜まっていく。こうなりたいとか、こうなってほしいとか、山ほどあるじゃないですか。特に現代は、みんな消費者としてジャンキーの度を超えてる。そういう状況に対して「みんなもそうやけど、俺も一緒や」という気持ちがあって。「ほんまに大事なものはなんや」と考えたとき、大切な人に会えるだけでいいやろと。そういう答えが出たんです。
Taito 俺もほんまにそうやなと思う。今、俺らが日本でできてることって、戦争になったら全部できなくなるじゃないですか。戦争が始まったら結局、ただ会いたいという気持ちだけになる。「8abyrousa」のリリックからは、現代に対する訴えかけをすごく感じます。共感する部分が多い。
──タイトルを「8abyrousa」にした理由は?
Ryosei バビルサのこと、つい最近知って。調べてみたら“死を見つめる動物”って出てきたんですよ。「いや、そんなん俺らもちゃう?」「人間だって、よっぽど生きても100歳そこそこやろ?」と思いました。そのあと、友達に話したんです。「バビルサは“死を見つめる動物”らしいねんけどさ」って。単純なようで複雑にも感じられる会話が、すごく滑稽で、楽しかった。そんな話をしているうちに日が沈んで、「バビルサの瞳が何を見ているの?なんて話 簡単な問題が解けないようだね 嘆こうや 日が暮れるまで」という歌詞を書いて。これが一発目のリリックになったので、曲名が「8abyrousa」になりました。
──バビルサについて語り合う描写は、楽しい時間の象徴なんですね。
Ryosei はい。答えのない話が好きなんやと思います。その場のみんなで出す答えは、1年後、2年後、10年後には変わってるかもしれない。そう思いながら話すのが面白い。若い頃に結婚なんかせえへんと言ってた人が結婚したり、私は長生きせえへんと言ってた人がお母さんになったり。大きな意味で“生きる”ということにつながってくる気がします。
──2026年は「8abyrousa」をどのように届けていきたいですか?
Ryosei 3月27日に1stワンマンライブ「turn red」を開催するので、まずはそこに集中していきます。そのあとは、まだ俺らのライブを観たことがない人にも、しっかり足を運んでもらえるようにしたいなと思っていて。イヤフォンで聴いてもらうだけではなく、いろんな場所で観てもらえるように、会いに行きます。
Taito とにかく表に出ていく。広げていく。Redhair Rosyの旗を持って、走り回るイメージですね。